生成AIの仕組みと安全運航への活用方法をシリーズで紹介します

この記事は代表の藤井迪生が一般社団法人日本船長協会の月報 Captain 第 477 号 (2023年12月)に投稿したものを再編集の上、再掲しています。

近年、ChatGPT (生成AIの一種)をはじめとする「大規模言語モデル」が注目を集めています。このモデルの誕生で、コンピュータは人間の言葉や文章の意味を汲み取るほどに進化し、従来は人間がコンピュータ言語に合わせて処理をしなければならなかったものが、コンピュータの方が人間の発する言葉に合わせて柔軟に処理を実行するようになりました。

すでに一部の企業や行政機関で利用が始まっているChatGPTは、コンピュータが人間と対話しているかのように振る舞ったり、人間の指示のもとで資料の作成や要約を行ったりできます。一方で汎用形AIとも呼ばれ、専門的な分野では正しい回答を得ることが難しい側面もあります。しかし、ChatGPTにベクトル検索技術を組み合わせることで、 「人間の言葉の意味を汲み取った処理ができる」というメリットを生かしたまま、一定の海事知識を持った対話型AIを構築することが可能です。

ここでは、私の開発経験をもとに、大規模言語モデルの動作の仕組みや制限について触れながら、海技者の日々の業務に活用できる対話型AIを構築する方法を紹介します。具体的には、本船からのヒヤリハットレポートの内容と類似した過去の事故事例を1万件以上の事故調査報告書から見つけ出し、その事故の概要や原因について対話形式で調べられるシステムの構築方法を関連する技術とともにシリーズで紹介していきます。